大貫さんインタビュー(2)

<安全な部活動、スポーツ活動について>

 

Q:昨年、2013年には、日本オリンピック委員会を始め、大きな団体が「スポーツ界における暴力根絶宣言」をだしました。「体罰」という名の「暴力的な指導」は、今後減っていくと思われますか?

A:多少は減ると思います。ですが、激減するか?というとなかなか難しいのかな、と思います。それは、保護者の中にも「体罰信仰」のような人達もいるのが1つ問題としてあります。

「子どもは未熟で不十分な存在だから、大人が導いてあげなければ」、という考えではこれらの問題はなくせない、と思います。

子どもは未発達ではあるけれども、一つの完全な、きちんとした存在である、ということ、子どもにも人としての権利がある、という事を理解しておかないといけません。
教育関係者が「教える」というスタンスでいる限り完全にはなくせないでしょう。子ども達が自ら「学ぶ」環境を築いてあげることが何より大切なのではないでしょうか?

 

Q:大貫さんが考える「子ども達の理想的な学校スポーツ(授業の柔道や運動部)への参加」についてご意見があればお願いします。

A:子どもが主体である、ということですね。楽しくスポーツをやりたい子もいれば、勝つことに一生懸命取り組みたい子もいると思いますから、子ども達が選択できるようになるといいな、と思います。色んな部活が経験できるといいな、と思いますよ。なんで1つの部活しかダメなんだろう?と不思議に思います。

 

Q:海外の学校では一人の生徒がアメフト部とバスケ部に所属していたり、サッカー部とソフト部、に所属していたり、というのは自然なんですが・・・。比較できなければ子どもも自分に何が向いているのか、何が好きなのか?という事が分かりづらいのかな、と思います。

A:その通りですね。

 

Q:顧問、だけでなく、OBや先輩からの「パワハラ」も部活には多く発生しているようですが、「健全な」学校部活動には、どのような体制が望ましいと思われますか?また現在の指導者(顧問)に必要なスキルや知識は何だと思われますか?

A:イギリス柔道連盟が作成した、「*児童保護の方針・手続き・ガイドライン」などは非常に素晴らしく、参考にすべきです。

スポーツでの事故事態はマイナスですが、そこから学ぼうとする姿勢、解決のため、再発予防の方法をシステム化して日本も確立していくべきだと思います。そうしないと防止はできないと思います。

運動部顧問の資格制度も必要でしょう。コーチング学やスポーツ医科学に基づいた指導法を学ぶ必要があると思います。

 

*イギリス柔道連盟 Safe landings 児童保護の方針・手続き・ガイドライン

全国柔道事故被害者の会によって、和訳がされています。

一部ご紹介すると、柔道指導における身体的虐待(例:技術的な正当性を欠く過度の激しい乱捕り、罰としての不適切なレベルの身体訓練)や、心理的虐待(若い選手の進歩への努力を繰り返し無視する、勝利の価値を強調しすぎる)、ネグレクト(若い選手が容認できない怪我の危険にさらされる、いじめや嘲りを受けても介入してもらえない)、いじめ(身体的いじめ:殴る、蹴る、言語的いじめ:いやみ、脅し、心理的いじめ:馬鹿にする、無視する…等)について、などの説明が詳細にあり、子供の話を聞くときの方法や、問題行動を見つけたときの対応方法などが詳しく記載されています。

全国柔道事故被害者の会HPよりダウンロードできるので、是非皆さまご覧ください。

 

 <保護者の役割>

 

Q:我が子が安心して学校生活を送り、そして部活動に打ち込めるよう、親としてできる事や子ども自身ができることなどはありますか?

A:まずは親も知識をきちんと持つ、ということ、ですね。学校には色んな危険があるのだ、という事を少しでも知っておく、ということ。

そしてわが子の様子に不安を感じたり、心配なことが起きているようであれば、学校側に物を申すことは悪い事ではない、というも知っておいてほしいです。

疑問に思っていること、不安定な様子が子供にあるのであれば、学校と普通に話したらいい。対策をとってくださいとお願いすれば良いのです。

「大人として」の「当たり前」のコミュニケーション力をつかって学校に話に行けば良いのです。

 

Q:子供が大きくなってくると、直接親にも悩みをすぐに打ち明けてくれなくなってくるかと思うのですが、親が気を付けておくべきポイントなどがあれば教えてください。

A:まずは目の前にいるわが子の様子を良く観察する、という事だと思います。加えて普段からのコミュニケーションも大切ですね。

また怪我をしているのに部活を休めない、とか、病院に行かせてくれない、など「なんかおかしいな?」と感じることがあったらそのままにしない、ということです。

他の保護者との情報交換もいいですね。うちの子最近~だけど、お宅の子はどう?のような相談ができる保護者仲間がいるのもいいでしょう。

可能な限り学校の行事に参加して先生とコミュニケーションを取ったり、試合の応援に行けるのであれば行ったり、ということでもいいです。

お家では子どもが言いやすい環境を作ってあげるのもポイントです。

矢継ぎ早に、「あんたいじめられてるんじゃない?」「体罰受けてるんじゃない?」なんて言っても子どもは本当の事は言いません。

 

親はわが子に起こっていることに対してなかなか冷静にはなれないかもしれないのですが、時系列で日記のようにわが子の様子や、おかしなことがあれば記載してまとめておくのも良いです。

 

Q:親に知られないように嘘をついたり、隠したり、という子もいるのではないでしょうか?

A:親に心配をかけたくない、という子も少なくありません。ということは、子供が自らSOSを発してきた場合は、かなり状況が悪化していると思って早急に対応したほうが良いでしょう。

どのタイミングで親が出るのか?というのは難しいかも知れませんが、親の目に見える段階まで来ている場合は、対応を急ぎましょう。

 

Q:「指導」による悩みを抱えた子どもやその保護者が誰に相談したらよいか、というのも不明確なようで、できれば分かりやすい窓口などがあればご紹介したいと思います。

A:最近立ち上がった「学校事件・事故被害者全国弁護団」などは1つの機関として良いと思います。シリアスな物ではなくても情報を1つの機関に寄せていく、集めていく、という事は解決策を立てる上でも大切なことです。

 

最後に、スポーツペアレンツの皆様に、一言お願いします。

 

とにかく知識を得る、情報を得る、学ぶ、という事だと思います。

学校の運動部やスポーツにおいてのプラスの要素だけでなく、マイナスの要素も知っておく、という事が大切だと思います。

 

子どもが常に主体である、という事を忘れないでください。

 

 

大貫さん、お忙しい中取材にご協力いただきありがとうございました。

 

まずは「知る」という事からスタートしてみましょう。

 

大貫さんの著書「追いつめられ、死を選んだ七人の子ども達。『指導死』」を是非一度お読みください。

 

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