「指導死」親の会

大貫隆志氏インタビュー(1)

 

* * 大貫さん ご紹介 * *

「指導死」親の会 代表 / 著書:「指導死」(高文研)

 

2000年に大貫さんの次男、陵平君(当時13歳・中2)は自宅マンションから飛び降り、自らの命を絶ちました。

亡くなる前日、学校でアメを食べていたことを12人の教師から1時間半にもわたって指導され、反省文を書くこと等、教師から指示されます。翌日夜、担任から母親に電話が入り、お菓子のこと、学年集会で決意表明すること、保護者が学校に呼ばれること等が伝えられ、その後、陵平君は自らの命を絶ちました。

 

徹底的な原因解明を望むも、学校や教育委員会から満足のいく報告結果をもらうことは出来なかったそうです。「うちの子の例は珍しいケースなのか?」と情報収集を始めたところ、同じように「生徒指導」という名のもとに行われる教師の指導後、子どもが自ら命を絶つケースが他にも複数あることを知り、その後、「指導死」について様々な活動をされている大貫さん。

 

ルールに反することをした子どもが悪い、ちょっとした厳しい「指導」に耐えられないような弱い子のケースだ、という「世間の思い込み」や「おそらく~が問題なのだろう・・・。」という憶測で結論付けるのではなく、実際に自らの命を絶つまで追い込まれた生徒たちが複数存在する、という事実がある以上、その徹底的な原因究明や調査、分析などが必要なのでは?

個々の先生によって対応が異なってしまい、本来生徒に「反省」だけでなく、その後の「意識改革」や「成長」を目的としているはずの生徒指導、その対応が「反省」だけを求めすぎていないか?生徒を必要以上に追い詰めていないか?

二度と同じようなことが起こらないために、何をすべきか?どういう指導が望ましいのか?ということをもっと討論すべきなのでは?

 

そのようなことを訴え、活動されています。生徒指導、だけでなく、運動部における行き過ぎた指導についての情報も多くお持ちの大貫さんに、今回、スポーツペアレンツジャパンでは、その実態や保護者ができる予防や対策方法を中心に、お話を伺いたいと思います。

 

大貫さんの活動の経緯、などはこちらのサイトをご覧ください。(当時の記録が鮮明に残っています。)

https://www.2nd-gate.com/ryohei.html

 

 <「指導死」について>

「指導死」は、生徒指導による子どもの自殺を意味する、大貫さんの造語です。

 

まず、「指導死」の定義をご紹介します。

1:一般に「指導」と考えられている教員の行為により、子どもが精神的あるいは肉体的に追い詰められ、自殺すること。

2:指導方法として妥当性を欠くと思われるものでも、学校でよく行われる行為であれば「指導」と捉える(些細な行為による停学、連帯責任、長時間の事情聴取・事実確認など)。

3:自殺の原因が「指導そのもの」や「指導をきっかけとした」と想定できるもの(指導から自殺までの時間が短い場合や、 他の要因を見いだすことがきわめて困難なもの)。

4:暴力を用いた指導が日本では少なくない。本来「暴行・傷害」と考えるべきだが、広義の「指導死」と捉える場合もある。

 

Q:大貫さんの現在の活動についてお聞かせください。学校などで講演活動もされておられるとか?主にどんな内容のお話をされるのでしょうか?

A:講演は、ジェントルハートプロジェクトの活動の一環として1つとして、小・中・高校などでいじめ問題の話をしています。そのほか、教員向け、自治体職員向けの講演、年に1回ほどですが少年院で話をすることもあります。

最近流れが変わってきたな、と感じるのは、「いじめ」の講演の中に「指導死」の内容も入れてください、という要望を頂くようになってきたことです。

 

Q:それは学校などの講演会で要望されるのでしょうか?

A:そうですね。部活動での体罰問題などがクローズアップされ、そういう問題を危惧されている学校関係者の方からリクエストされることもありました。

 

Q:「指導死」という表現はインパクトのある言葉だとおもうので、学校サイドとしては「あまり触れてほしくない」トピックなのかな、と思っていましたが・・・。

A:両極端、ですね。指導死の問題を真剣に取り組まなければ、と思ってくださる先生方と、指導で子どもが自殺することなどあり得ないと思っておられる先生方と・・・。

 

Q:なるほど。実際に問題が起きているのであれば、再発防止のためにはまず知る、という事が大切なのかな?と思うのですが・・・。

A:その通りです。知らないのだと思います。実際に起きていることを知ることが、まずは大切ですね。

 

Q:「指導死」という概念は広がりつつある、と感じられますか?

A:少しずつ、ですが、昨年の大阪での件であったり、柔道の件であったり、で予想以上に広がったな、とは思っています。

今度はこの「指導死」がおきていることのアピールから、実際に指導死を無くしていく活動を展開していかなくてはいけないな、と思っています。

 

Q:2013年11月には文科省に意見書を提出されましたが、その後、何か進展はありましたか?

A:文部科学省は、”間接的に”は、「指導死」の存在を把握していることには、なっています。が、特にその原因解明や研究などが行われるようになっているか、というとそうではありません。

生徒指導の在り方、について研究があるべきだと思います。現在は全てOJTによるもので、教育的配慮に基づいた生徒指導についてもっと研究される必要があると思います。

 

Q:「指導」が原因と考えられる子ども達の自殺事件などを調べられ、何か共通ポイントなどがありますか?先生や保護者に伝えたいことや気を付けてほしい点などがあれば教えてください。

A:いくつか共通点があるので、それを是非知って頂きたいと思います。

①長時間指導

②複数教員による指導

③心への暴力指導

④えん罪型指導

⑤密告の強要

⑥連帯責任

⑦目的外指導への発展

⑧不釣り合いに重い罰則

⑨指導中生徒をひとりに

⑩指導後のフォロー欠如

 

これは指導死親の会で集まった時に保護者と話していて、「共通点が多いね」と気が付いて調べてみたのです。

 

例えば長時間の指導でいうと、4時間以上も指導された子もいましたし、複数教員による指導、では、うちの子でいうと、12人もの先生に指導されています。

また、誹謗中傷のような言い方を受けた子(そんなことなら学校をやめてしまえ、本当ならここでぶっ飛ばされてもしかたないんだぞ、など)や、やっていないのに「お前がやっただろ!」という、えん罪型のもの、また「誰がやったか言え」という密告の強要などは、子供にとっては友達を裏切るような行為ですから非常に辛いことなのにそれを強いられたり・・・。

連帯責任でいえば、「試合に出られないようになるぞ」とか「みんなに迷惑をかけるぞ」と言われる、など。

 

不釣り合いに重い罰則、という点では、例えば飴を食べた、というだけで長文の反省文を書かされたり、集会での決意表明をさせられたり、また、美術の授業に使うカボチャを動かしたというだけで、部活動への参加禁止や厳しいし叱責を受けた、という例があげられます。

また、去年も複数回ニュースにもなりましたが、生徒指導中に一人になった生徒が命を絶つケースもあります。

 

生徒指導中に子供を一人にしない、ということや必要以上に子供を追い詰めない、などはすぐに取り組めるもの、ですね。これらを知っておく、という事だけでもだいぶ違うのではないでしょうか?

 

また指導後のフォローでいえば、親だって子どもが悪さをして怒ったとしても、例えば父親が厳しくしたら母親がフォローするとか、一般家庭でも行われますね。4時間も説教することなんてないですよね?

「指導」と「懲戒」が区別されることなく行われている印象があります。

 

Q:色んな生徒や保護者の対応を迫られ、教師も非常に忙しく、「厳しく指導」すれば良い、という時代ではなくなり、対応が難しいのでは?と思います。

個別の対応は理想ですがなかなか現実的には難しいのでは?と感じるのですが、何か良い方法はあるでしょうか?

A:まずは知識を持ってもらう、という事だと思います。そして事件や事故が起きた時にきちんとした調査をする、ということですね。きちんとした調査をして、再発予防策を立てる、という事、に尽きます。

 

Q:大貫さんのご活動を支えているもの、そして活動のモットーを教えていただけますか?

A:子どもの命がかかっている、という事、そして必要としてくれている人がいる、ということでしょうか。

 

<スポーツにおける「指導死」>

 

Q:スポーツ、特に学校運動部における「指導死」、もしくは死にはいたらないけれども事件性の強いもの、についてはどれくらい発生しているのでしょうか?

A:運動部、に限らずに言えば、教育評論家の武田氏の資料によると、75件ほど起きています。

 

Q:大貫様のところにも相談が多く寄せられていますか?お話しできる範囲で構いません、具体的な事例などの一部をご紹介いただけますでしょうか?

A:部活動の顧問からの暴力的な指導、であったり、特待生で入学したために部活動を辞められない、辞めたら学校も辞めなければいけない、などと脅される、というような話も聞きます。

ケガをしているのに休ませてくれない、とかもありますね。お悩みをお寄せくださる方もおられるのですが、これ、といった方程式の様な解決策は残念ながらありません。

問題が複雑化した場合には、保護者が学校と直接交渉することには限界がありますから、弁護士の力を借りるなどの対応が求められると思います。

 

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