八田さんインタビュー(4)

<保護者の役割>

 

Q:スポーツの現場や家庭で、スポーツセーフティのために保護者ができる事はなんでしょう?

A:スポーツ事故の原因の多くが「無知」と「無理」から来るといわれています。

保護者の方にも、ぜひ緊急事態になりうるケガやRICE処置などについては学んでいただく機会があればいいなと考えます。

例えば、私がサッカーに従事していて感じるのは、脳震盪への危機意識が一般的に低いことです。

脳震盪は二度目以降が深刻な状態に陥り易いということは、私たちトレーナーは知っていますが、知識としては一般的ではありませんよね。

 

軽度の脳震盪を起こした選手が帰宅したあと、親御さんと電話でお話すると

「そんな大袈裟な。もうだいじょうぶですよ」というニュアンスを感じ取ることがあります。

 

ある公式戦の大舞台で、前夜にひどい脳震盪を起こしたエースストライカーの選手がいました。

脳外科のドクターは「東京中どこの医者にかかっても、キミを試合に出すことを良しとしないだろう」とおっしゃり、監督

は断腸の思いでメンバー変更に承諾してくださいましたが、そのことをその選手の親御さんに伝えに行くと

「うちの息子はこの試合が大きな舞台の最後です。あなたはそれでも息子を試合に出さないと言うのですか」

とスタンドで言い合いになったことがあります。

よくニュースで報道されるような「無知」や「無理」に伴う危険なシーンは、必ずしも指導者だけが対象ではないと思い

知らされた出来事でした。

 

Q:トレーナーや医師が存在しない少年団や部活動において、子どもたちの安全を確保するためにできる具体的な取り組み方法や期待する役割などがあれば教えてください。

A:基礎的な応急手当の知識の習得は、お子さんに対してだけでなく、ご家族みんなに活用できることだと思います。

また、子どもたちのスポーツ現場にトレーナーが必要だと思われるなら、それを行政や運営組織に伝えることも保護者の方にできることかと考えます。

 

Q:子どものスポーツ参加における親の重要な役割とは何だと思われますか?

A:スポーツにケガはつきものです。これをまず理解された上で子どもたちをサポートし、送り出すことも実は大切だと思います。

 

Q:スポーツ障害を起こさないため、そして起こりにくい身体作りなどはできますか?小さいうちから行っていたら良いことや習慣などがあれば教えてください。

A:子どもの動作は、私たち大人と比較にならないぐらい機能的です。

講習会の仕事で小学校へ行き、体育や休み時間に遊んでいる小学生を見ていると、なんて無駄のない動きをするの

だろうとびっくりすることがあります。

○○トレーニングなど、小さいうちから何か特別なことに固執しすぎてしまうと、実はこうした機能性が逆に落ちてゆくのではないかという発表を以前学会で聞いたことがあります。

小さいうちは出来るだけ外遊びをして、色々なスポーツに従事すると良いのではないでしょうか。あとはとにかく、1日3回バランス良く食べて、よく眠ること。これに尽きます。

 

【心のケアについて】

 

Q:スポーツを通じて、子どもたちは様々な経験をして成長すると思うのですが、ケガをしたりなかなかチームで活躍

できない子供に対して、どのような言葉をかけたらよいのか迷っている保護者の方もおられるようです。

悩みを抱えた選手に対して、八田さんが心がけている対応方法などがあれば教えてください。

A:現在は中高生をみることが多く、しかも男子なので、どちらかというと声はかけないほうです。

ただ、観察はしています。特に長く外傷障害を患っている選手のことはよく見るようにしています。

心のケアはご家族にはかないません。親御さんは選手たちの最も身近にいらっしゃる方たちです。とにかく、本人たちが必要な時に手の届くスタンスで、まずは見守ることが一番ではないでしょうか。

 

スポーツペアレンツの皆さんへ一言お願いします。

スポーツは、安全でなければ楽しくありません。

スポーツに関わっているお子様をお持ちのスポーツペアレンツの皆さまのなかで、すでに私たちスポーツセーフティの活動にもご興味を持ってくださっている方もいらっしゃると思います。

 

子ども達が安全にプレーできる環境を整えるために知っておくと便利な知識や情報、その勉強ツールをこれから私たちもどんどんご提供できるようにしますので、是非そのようなツールを使って学ぶ機会を作ってみてください。

 

八田さん、お忙しい中たくさんの質問にお答えいただき、そして惜しげもなく提供してくださった多くの資料、本当にありがとうございました。

 

スポーツセーフティジャパンさんのリンクはこちらです。是非一度覗いてみてください!

 

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