八田さんインタビュー(3)

<スポーツセーフティについて>

 

Q:スポーツセーフティとはなんでしょう?

A:スポーツが安全に行える環境のことです。

詳細はこちらからどうぞ。

https://www.sports-safety.com/modules/open/11aboutus.html

 

Q:スポーツセーフティジャパンの活動についてお話を聞かせてください。

A:スポーツの安全に関する講習会活動や、運動施設が安全面での諸条件を満たしているかを評価し、アドバイスして認定をする活動を行っています。

 

人、モノ、体制/制度において、より安全が確保できるようお手伝いしています。

 

Q:立ち上げのきっかけなどがあれば教えてください。

A:代表の佐保が、元々こうしたことをやりたいと考えていました。

すべてのスポーツ現場にアスレティックトレーナーを置くのはまだ無理でも、最小限の安全に関する知識を選手やその家族、指導者、施設運営者/管理者が習得すれば、最悪の事態は防げるかもしれないという願いがあり、佐保に賛同するアスレティックトレーナー数人で立ち上げました。

 

Q:今後どのような活動を展開されるのでしょう?

A:現在、スポーツの安全に関するライセンス制度やE-ラーニングのコースを準備中です。スポーツ指導者だけでなく、選手のご家族、スポーツ愛好家の方々、また、スポーツ施設を管理する方々にもお届けしたいと考えています。

 

<スポーツセーフティ向上について>

Q:スポーツ現場での安全確保、という面で最低限しておくべきことや用意しておくべきものはなんでしょうか?

A:まずはEAP(Emergency Action Plan)の作成、AEDへのアクセスや応急手当用のキットの準備。そして緊急対応の手順を常にアップデートしておくことだと考えます。

例えば、一般市民の行うCPRにはいま人工呼吸が不要となるなど、手順も以前に比べてだいぶ易しくなっています。

スポーツ現場に関わってはいらっしゃるけれど、これまでこうしたことを学んだ経験の無い方には是非一度CPRやAEDの講習会を受けていただくことをお勧めしたいです。

 

 

Q:EAPについてご説明いただけますか?八田さんが中学や高校の部活動で用意されているものをご紹介いただけますでしょうか?

A:武蔵高等学校中学校サッカー部で作成しているEAPチャートをご紹介します。

これは学校の緊急対応プロトコルにのっとっているものですので、この学校独自の手順が入っており、他チームではこのまま使用できません。

だからこそ、各現場でEAPを作成する必要があると思います。

 

今回特別に、その実際のEAPをご紹介してくださいました。是非参考にしてください。

EAP Sample

 

Q:コーチや保護者がスポーツセーフティについて正しく学べるところがあまりないと思うのですが、スポーツセーフティジャパンではそのようなプログラムはありますか?

A:スポーツセーフティージャパンでは、依頼内容に応じた講習会を実施したり、安全に関するライセンス制度を設けたりしています。

また、Android携帯用のアプリケーションではいつでも簡単にスポーツセーフティーに関する知識を学ぶことができます。iPhone版は現在申請中です。

 

Q:夏のスポーツに多発する熱中症ですが、トレーナーとして徹底している予防法などがあれば教えてください。

また、八田さんが事前に準備しているものや対応時用に常備しているもの、選手への教育なども含め注意して見ている点を教えてください。

A:熱中症の予防として具体的に行っているのはWBGTの測定、それに合わせた冷水の提供と体重測定です。

中学や高校の大きな大会は真夏に開催されるため、WBGTが高過ぎるからといって何日も練習をオフにすることはできません。

その代わりに朝早くに練習を行ったり、練習時間を短くしたり内容を変更したりなどの対策をとります。

 

大変ラッキーなことに、現在私が従事するチームの指導者はリスク管理に非常に知識や理解のある先生で、気温が高い時には給水をこまめに入れるなどの細かい対応をしてくださいます。

 

また、夏は定期的に練習の前後に*体重測定を行います。(こちらも以下にご紹介します、参考にされてください。)

 

同じ練習、同じ給水時間に同じ量を飲んでいても、明らかに個体差があります。

体重の減が激しい選手ほど、熱疲労や熱けいれんなどの症状が出やすくなっています。

 

本人たちに自分の体重がどれだけ減るかを理解させ、自分で水分摂取に努めるよう促します。

学校現場では、すべての部活動に対応できるような製氷機の大きさや数が絶対的に足りません。

学校側も出来るだけのサポートをして下さっていますが、夏のスポーツ現場で冷水を提供し、緊急用の氷も確保できるようにするには、ご家庭の協力が欠かせません。

 

私のチームでもご家庭で毎日ペットボトル氷を作っていただき、選手たちが持参します。

今年は本当に暑かったので、今までトレーナー活動をしてきた夏のなかで最も多くの熱疲労や熱痙攣が出ました。

 

どれも軽度でしたが、あって助かったと思ったのは経口補水液です。スポーツドリンクに混ぜるなどして予防にも使えます。

また、一度起きた熱痙攣をスポーツドリンクだけで軽減させるのは非常に時間がかかりますが、経口補水液には即効性があります。

夏場は是非、どの現場でも準備されると良いと思います。

 

八田さんのご厚意で掲載の許可をいただきました。体重推移表はこちらです。

 

運動前と運動後、の体重を測定し、その差(つまり、運動中に失われた水分量)が体重の2%を超えていた場合、黄色くマーカーが引かれています。

3%を超えるとオレンジ、4%以上は赤、と、一目で体重のロスが確認できます。

 

同じ練習量、同じ飲水休憩を取っていても、これだけ個人差があるとは驚きです。

 

 

 

こちらには、練習時の天気とWBGTが記入されています。

毎回の練習や試合時にこれを調べ、その日の体重ロスや熱中症の症状を訴えた選手の人数などを記録しておくことは、熱中症の再発予防にもつながります。

 

Q:今後、日本にスポーツセーフティという概念が根付くためには何が必要だと思われますか?

A:スポーツは、安全が確保されて初めて楽しめるのだという概念が根付くと良いかと思われます。

残念ながら、スポーツに限らず何か事故があって初めて行政や運営団体が動くというのが物事の常だと思います。

携わる人たちみなが危機意識を持ち、適切な対策が取られることを渇望します。リスク管理だけしておいて、あとはスポーツを存分に楽しめば良いのですから。

 

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