専門家インタビュー 中村千秋先生<4>

【スポーツ現場における取り組み】

 

Q:試合時に準備するものはなんでしょう?他校との情報共有のようなものは事前に行ったりしますか?

A:スポーツによって異なると思いますが、今ではスパインボードやネックカラー、マウスシールド、場合によってはAEDなどが準備されます。松葉杖や三角巾なども準備します。ラグビーではコンタクトレンズのスペアや手鏡も準備します。

大学で行っているとは聞いたことがありませんが、関東の高校ラグビーでは県大会、関東大会、全国大会、あるいは合宿先ではトレーナーたちがお互いに、特に病院に関する情報を共有しています。

また、ゲーム前にはお互いに挨拶を交わして、ラグビー独特だと思いますが近くにいるトレーナーが選手の所属にかかわらず先に選手に到着し、選手の安全を確保します。関東の高校ラグビーでは情報共有がうまくいっていると思います。

 

Q:学生トレーナーの方が普段練習に持参しているものを拝見できますか?

A:ラクロスのトレーナーを呼んでみましょう。

 

ここで、ラクロス部のトレーナーさんが登場!実際練習に持参しているものをご披露いただきました。

 

こちらがトレーナーズバッグ。普段は腰に巻いています。スプレーは、テーピングがよくくっつくようになる、スプレーのり。

  

 

 

 

 

 

 
 
中には応急手当グッズがいろいろと。テーピング、ガーゼや絆創膏、ワセリンなど。
 

 

 

 

 

 

 

 

オレンジ色のものは、人工呼吸時に使用するマスク(マウスシールド)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q:早稲田大学の構内(所沢キャンパス)の案内図には、AEDや車いすの設置場所が記載されていましたが、この目的を教えてください。

A:これはもうエマージェンシー対応目的です。授業中に学生が貧血で倒れたりするので、そのために車椅子が準備されています。また、スポーツ実技の授業ではケガが発生することもあります。

 

早稲田大学所沢キャンパスの案内図。AED設置場所と車いす設置場所が一目で分かるようになっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q:顧問や選手への安全活動における教育などは、トレーナーとしてされることはありますか?またそういう機会を設けておられますか?

A:スポーツ科学部教員が分担執筆し、競技スポーツセンター(アメリカではアスレティックデパートメント)が発行している「安全のしおり」という小冊子があり、新入部員には配布されています。部活単位でみると安全活動に関する啓蒙は各部に任されています。

 

Q:合宿や遠征において事前に必ず確認するべきことなどはありますか?

A:合宿・遠征先での病院の情報です。これが一番大切。次に水と氷の確保。気温や湿度、できれば食事の情報も欲しいですね。冬だとかぜやインフルエンザがその地域で流行していないかをあらかじめ調べます。

 

Q:選手がケガをしてから復帰するまでの早稲田大学での流れを教えてください。

A:トレーナーがいればトレーナーが評価、応急処置をし、場合によっては医療機関(指定の医師や医療機関のこともあれば近くの町医者の場合もあります)を受診させる。いない場合はチームメイトやコーチが同様の対応をします。

 

医療機関を受診するほどではなさそうだけど、気になる場合は早稲田大学のスポーツ医科学クリニックを受診します。トレーナーが帯同する場合もあります。

クリニックでは必要に応じて医師へ照会したり、クリニックのトレーナーだけで対応したりします。

 

ある程度ケガが良くなってきたら選手はクリニックのコンディショニング部門に移るか、あるいはチームでアスレティックリハビリテーションから復帰までの訓練を行います。

 

Q:暑さにつよい身体作り、というのはできるのでしょうか?親がサポートできることはなんでしょう?

A: 暑さにより強い身体を作ることは可能だと思います。要は熱順化させるわけです。徐々に暑熱環境下に身体を慣らせます。

そのためには2週間程度の期間をかける必要があります。暑さの中で運動の時間や強度を一気に上げては危険です。

親がサポートできるとすれば規則正しくバランスの良い食事をとらせることと、体重をこまめに測定し、記録することでしょうか。

急激な体重減少や、長期間にわたる体重減少は要注意です。

朝の体重はその日のうちに食事と水分補給で取り戻してから就寝させるようにしましょう。

 

Q:熱中症は再発しやすい、という話もあります。スポーツへの復帰基準のようなものを早稲田大学では設けておられますか?

A: 大学として特にもうけてはいませんが、部単位では設定しているかもしれません。

今は全体的に「失った体重はその日のうちに回復させてから休む」が浸透しつつあるように感じます。

 

Q:他校に比べ、ケガ人に対しての対応やスポーツ障害予防、加えてメンタルにおいても手厚いケアが行われていると感じるのですが、それがつまりは、「強い」早稲田の根底を支えている、と思われますか?

A:確かにスポーツ科学部が設立され、スポーツ医科学クリニックが運営されてから早稲田スポーツは復活しています。

でもこれは手厚いケア体制によるだけではなく、競技レベルの高い学生をスポーツ科学部が多く入学させているのも一因でしょう。

加えて、授業では解剖学、生理学・運動生理学、バイオメカニクス、スポーツ医学、応急処置、スポーツ栄養学、コーチング、教育などなど、アスリートやそれをサポートするために必要な様々な知識やスキルを教えていますので、そこで習った知識やスキルを選手自身やトレーナーたちが自分たちなりに応用している結果だとも言えると思います。

 

Q:アスレティックトレーナーの教育を受けることができる環境は、専門学校が多いイメージがあるのですが、4年生大学のカリキュラムの中に組み込み、そして学科を設ける、という点でこだわった点やご苦労されたことなどがありましたら教えてください。

A:こだわっている点は「トレーナーを育てているのではなく、あくまでもスポーツ科学の専門家を育てている」ことを前面に押し出していることです。機会があれば学生に直接言って聞かせます。スポーツ科学の専門家としてのアスレティックトレーナーを育てることがこの分野の発展に寄与すると信じています。この点も含め、苦労をしたという記憶はありません。

 

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