専門家インタビュー 早稲田大学 スポーツ科学学術院 

アスレティックトレーナー 中村千秋先生(2)

【スポーツ現場での対応】

 

Q:早稲田大学も多くの運動部がありますが、ケガの多い種目は具体的になんでしょう?

A: 部活動別に統計があるわけではないので、選手数あるいは練習時間あたりのケガの発生率はわかりませんが、アメリカンフットボール、ラグビーなどが多いように思います。

 

Q:どのようなケガが多いですか?

A:一般的なスポーツ障害統計と同様に、足関節、膝関節が多いように思います。

 

Q:選手が大学に入る前、のケガの中で、大学まで引きずっている障害で多く見られるのはなんでしょう?

A:足関節の慢性痛(捻挫の後遺症)、腰痛、肩の腱板損傷が多いように思います。

足関節の慢性痛を抱えている選手の多くはその他にも膝や股関節、腰部にも問題を抱えているケースが多いようです。

 

Q:高校や中学の部活動における、生徒に対してのケアや安全面の管理は十分だと思われますか?

A:早稲田大学に進学してくる選手に関していえば残念ながら十分だとは思えません。

一般的に中学校や高校では学校法に基づいて生徒の健康や安全に関わる管理がなされているはずですが、こと部活動をしている生徒への管理は残念ながら十分とは言えないと思います。

 

Q:子ども達が安心して、そして安全な環境で学校の部活動に参加するために、個人的にはアスレティックトレーナーが学校に配置されてくれればいいな、と思うのですが・・・

A:私はその前に、きちんとした指導者を部活動につけさせるべきだと思っています。部活動の参加は必須である、とうたっている学校でも、部活動に指導者が来ないで、子どもたちだけで活動しているところが実際多いです。

まずは指導者、コーチがきちんと練習の最初から練習後までいること、そこからですよ。トレーナーの配置は時間がまだまだかかるかな、と思います。

まずは指導者がいて、その指導者が子供たちのスポーツ活動中の安全を守る責任をきちんと持つこと。

 

Q:親ができる事は何でしょう?

A:その学校やチームを選ぶ基準の中に「安全な環境か?」を入れておくといいのではないでしょうか?アメリカではまさにそういう流れになっています。

その学校には、どんな指導者がいて、どんな指導をして、子どもたちの安全性はどのように確保されているのか?ということを基準として学校を選ぶようになってきています。

有名校だから、というだけでは、もう選ばれなくなってきていますね。

 

Q:トレーナーがいる学校、は現在日本では先日取材させていただいた早稲田実業の高橋アスレティックトレーナーの存在のみ、なのですが・・・

A:学校に常勤しているアスレティックトレーナーは、高橋さんだけ、ですが、学校の事務として学校に雇用され、夕方からはトレーナー業をする、というシステムを取っている学校もありますよ。試合の時や遠征時、もしくは合宿の時には必ずいる、という部は結構あります。

強豪校ではほとんどいるのではないでしょうか?トレーナーがつく部がある学校を調べられるサイトなど作ったらどうですか?

 

それはおもしろいですね!そういうサイトがあったら保護者としても助かると思います。

 

Q:高校時代は有名選手であったのに大学に入って伸び悩む子もいれば、高校時代は無名でも大学に入って伸びる子もいます。

その違いはなんでしょう?

A:様々な要因があると思いますが、高校時代のケガを抱えたまま入学してくる選手は伸びないですね。

ケガの再発などで練習時間や質が制限されるのが原因だと思います。場合によっては中学時代のケガだったりします。

また、高校時代まででその競技を十二分にやりきったと感じている選手も多くいて、そのような選手では「バーンアウト」のような状態に陥ります。

同様に、高校時代までの記録があまりにも良かったためにその記録をなかなか超えることができず、ひどく落ち込んだり競技をやめたりする選手もいます。

 

【選手、学生教育について】

 

Q:中村先生が考える「良い選手」とはどんな子でしょう?

A:基本的に人の話に耳を傾ける素直さを持ち、自分で考え、自分で判断できる選手でしょうか。

 

Q:親のしつけや環境が大きく影響しているな、と感じることがあれば教えてください。

A:人の話をじっくり聴くことは親のしつけの部分が大きいのではと感じます。

また、今や正しい食事(習慣)なくして一流の選手にはなれないのですが、食事の習慣(何を選択し、どのように口に入れるか)も親のしつけでしょう。加えて、自分のことは自分でできる(掃除や洗濯、後片付けなど生活の基本的なこと)のも親のしつけだと思います。

あと、なんと言っても、「挨拶ができる・できない」も親かと思います。

環境も大きいとは思いますが、環境の前に親があるので、親の影響の方が大きいと思います。

 

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