専門家インタビュー 岩崎由純先生 (4)

【心のケアについて】

Q:スポーツを通じて、子どもたちは様々な経験をして成長すると思うのですが、ケガをしたりなかなかチームで活躍できない(試合に出られない)子供に対して、どのような言葉をかけたらよいのか迷っている保護者の方もおられるようです。何かアドバイスがあればお願いします。

 

A:今置かれている立場、ポジションでベストを尽くすことを良しとしてあげる事ですね。

「何であんたは試合に出られないの?」とか、「なんであの監督はうちの子のことを分かってくれないんだ?」とか、ネガティブなことを子どもの前で言うべきではありません。

例えば、子どもの前でお母さんがお父さんの悪口を言ったりすると、子どもはお父さんに対して不信感を持つようになります。 

それと同じで、保護者の方が監督の悪口を言ったりライバルの悪口を言うとかは絶対やってはいけないことです。

 

「何故あなたがレギュラーとして出ることができないのか、次の試合に出るためには何をすべきなのか、あなたと同じポジションの子がどんな動きをして、どんなプレーをしているか、よく見て、そしてその子を応援してあげなさい。」

そんな言葉がかけらたら素晴らしいですね。

そしてチャンスが自分に巡ってきたときに、きちんと結果を出せるよう、作戦や動きを良く分かっておくこと。

他人を変える、ということではなく、自分自身を変えていくためには何をすれば良いのか、どんな見方をしたらいいのか、そんなことを教えてあげられるといいと思います。

 

【指導者との関わり方】

Q:先ほどとは反対に、保護者の方が様々な情報を得ていて知識があっても、「昔ながらの」「自らの経験だけで」指導しているコーチも実際多いです。

指導方法に疑問を感じた場合、保護者はどのように対応したらいいと思いますか?子どもが関わっている分、言い方に非常に難しさを感じます。

 

A:私だって同じです。私がいくらペップトークを知っていて、スポーツ心理学について学んでいるとしても、監督やコーチを変えようとはしません。

聞かれたらもちろん答えます。しかし、自分の立場で、どうフォローできるか、ということを考えます。

例えば、コーチが「試合で負けたら走らせるぞ!」とすごい形相で言っているのを見たとします。その言葉は間違ってますよ、と指導者には言いませんが、その真意はなんなのか?と言うことは選手や子供には言います。

「コーチがあのようなことを言ったのは、君たちに全力てプレーしてほしいと思ったから言ったんだよ。」と。

また、練習がきつくて選手達の身体の疲労もピークだ、というときでも「練習を変えろ、とか量を減らしたほうがいいのでは?」とは直接は言いません。

監督やコーチ自らが気付き、練習内容を見直さないとな・・・と思ってもらえるように工夫し、仕向けます。

 

ここで、日本の「コーチ」とアメリカの「コーチ」の違いについて、そして日本のスポーツ界における「体罰問題」について岩崎先生がお話しされた記事をご紹介します。

この記事が掲載された「Sports Japan」は、日本体育協会が主に指導者資格を取得した人を対象に配布している月刊誌です。

 

・  ・  ・  ・(以下抜粋)・  ・  ・  ・

アメリカのコーチは、立場が上だかといって偉ぶることはありません。選手にも気さくに話しかけますし、誰にでもきちんと対応します。手を出すことは絶対にありません。

暴力に訴えることなく思いや考えを伝え、人を育てる力、次のステージへと導くヒントを言語表現で選手に伝える力がなければ、指導者にはなれないのです。

私が「ペップトーク」を普及、推進するのは、スポーツ界で連綿と続くハラスメントの連鎖(自分が受けてきた指導をそのまま自分の選手にもすること)を断ち切るためです。

今の日本のスポーツ界は、自分がその競技を経験してきた、指導を受けてきたというだけで、監督やコーチになれます。それこそがそもそもの問題点であると考えています。「指導する人たちを正しく指導する」教育制度が必要なのです。

指導者には表現力や伝える力に加えて、人の話を聞く力も必要です。正しい「教え方」だけでなく、正しい「導き方」ができるよう、指導者が学ばなければならない時代なのです。

私がアメリカで出会った偉大な指導者たちは、(選手がその気になり、魂が震え、覚悟を決められるような)スピーチが非常に上手でした。

「いま持っているものを全て出しきろう」という発想からスタートし、日本で良く耳にする「お前ら、こんなことで勝てると思っているのか!」というような言葉は絶対に使いません。

あげるのは手ではなく、指導スキルのレベル。ぜひ、体罰をなくしていきましょう。

<Sports Japan 2013 03-04 特別号より抜粋、一部加筆 >

・  ・  ・  ・  

◆ペップトークの保護者の活用法アドバイス

実際保護者の方がペップトークを活かすためのヒント部分を、岩崎先生の著書、「やる気をなくす 悪魔の言葉 VS やる気を起こす魔法の言葉 」より一部抜粋させていただきました。

 

P3

家庭での子育て、学校教育、スポーツ指導の現場、ビジネスの現場など、「人を育てる」「能力を伸ばす」現場における指導をみていて驚くのは「禁止令」を中心とした指導が本当に多いこと。

「やめなさい」「やっちゃだめ」「これをしてはいけない」・・・

確かに、「教育的観点」から「やってはいけないルール」や「マナー」を教えることは大切だが、やりすぎると「自分で考える」「自分で判断する」「自ら実行する」といった自主性は失われてしまう。

 

P112

夢を実現させた人たちは、何か特別な環境に恵まれていたわけではない。多くはごく一般の家庭で生まれ育っている。必ずしも、親が金持ち、アスリート、アーティスト、優秀な科学者ではない。

一つだけ共通しているのは、「夢」に対して肯定的で、「夢を持ち、目標を立て、ゴールを目指す人生」こそ素晴らしいと信じ、子どもが「夢」を叶えることを心から応援する家庭環境に育ったこと。

 

P144

「何でやらないんだ?」「どうしてやらないんだ?」といった「Why」での疑問形の問いかけは、相手の思考を硬直させてしまう。

「何でできないんだ?」と責められて「できなかった自分」に目を向けると、「二度とミスをしないようにしよう」という反省の前に「もうやりたくない」という気持ちになり、ミスをしたこと、叱られたことがトラウマになって嫌悪感を生む。

「どうやったらできるようになるか?」(=How)と考える習慣が身に付くと、「失敗から学ぶ」「成功するためにはどうするか」という思考習慣が生まれ、失敗から逃げるのではなく、成功をイメージして挑戦する意欲にもつながる。

 

Q:ペップトーカー岩崎先生の、スポーツペアレンツの方に是非見て欲しい、おススメの映画があれば教えてください。

A:「Rudy」(ルディ)と「Miracle」(ミラクル)、「Coach Carter」(コーチカーター)ですね。

 

Q:今、はまっている言葉はありますか?

A:「感謝」ですね。本気で誰かに対して「感謝」する、ということが、人であることの原点なのでは?と思っています。

 

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