専門家インタビュー 

アスレティックトレーナー 岩崎由純先生 (3)

【保護者の役割について】

 

Q:子どものスポーツ参加における親の重要な役割は何だと思われますか?

A:勝っても負けても、ベストを尽くす、努力をする、そのことが尊いのだ、ということを「ドリームサポーター」として子どもに伝えることですね。

スポーツを本気になって取り組んでいる子供達には、いろんなものが必要です。今はレベルが高くなってきているので、自分の力だけでは、彼らたちの目指している夢や目標を達成できなかったりします。その為に、トップレべルでは監督、コーチ、トレーナーたちが必死になって選手を支えています。

ですが、在学中においては保護者の協力なしには難しい所もあります。それを、支えるサポーターであってほしいと思います。

サポーターというのは、前に出ません。前に出てギャーギャー言ったり、監督やコーチの文句を言うのではなく、裏で、陰で、下で支えてあげる立場なのです。

 

そしてもう1つ。中学時代にトップを目指す、高校時代に日本一を目指す、青春時代に自分の時間を割いて1つの事に打ち込んで、必死になって努力して、「負けず嫌い」を卒業して「勝ち好き」な子にすることです。

どんなに頑張ったって、日本一になるのはただ一人。世界一になるのはただ一人。オリンピックで優勝するのも一人。その他の人はみんな負けちゃうわけです。

でも、何が悪いわけではない。その努力こそが、そこを目指したことこそが尊いのです。

ですから、「負けず嫌い」ではなく「勝ち好き」にするのが親の役目です。

 

 

Q:「勝ち好き」とは?

A:「負けず嫌い」の反対でしょう?「勝ち好き」の子は、優勝できなかったとしても、優勝した選手に向かって「おめでとう!」といって握手をすることができるんです。

「次は自分が勝つよ!」と相手に向かって言えるんです。「負けず嫌い」の子は、挨拶もしないで帰っちゃうかもしれません。

子どもはみんな「負けず嫌い」なんです。でも、その「負けず嫌い」を「勝ち好き」に成長させることができたなら、親として成功です。

「勝つ」ことが「好き」だから、負けても、すぐに「勝ちたい!」と思って次の行動が、自分からできる子。

 

Q:「勝ち好き」な子に育てるには親はどうしたらいいですか?

A:できたこと、良かったことを認め、受け入れてあげる事。最後まで信じてあげること。

 

例えば試合で、相手が強かったり、点数が離れてしまったりしても、最後まで頑張り続けた子どもに対して、その頑張りを認めてあげること。

「なにやってんだー!」なんて叫ぶのではなく、「そうだ、その調子だ!」「最後までがんばれ!」と応援してあげる。できていることを認めてあげる。

 

できていないことや、足りないところ、その子にないもの、にフォーカスしてはいけませんし、「どうしてできないの?」などとは言ってはいけません。追いつけないくらい点数が離れてしまっても、最後まで頑張っている子どもの姿を素敵だと思って欲しいのです。

 

また、子どもがチームメイトに対して「何やってんだよ」と罵倒するようなことがあれば、「熱くなるのは分かるけれど、それは自己主張だね。それはいい、けれど、一緒に頑張った、一緒に戦ったチームメイトの子に対して思いやりを持って接してあげられたらもっとよかったね」と、子どもの気持ちも受け入れつつ、そしてさらに良くなるためにはどうしたらいいかを一緒に考えてあげるといいですね。

 

子どものできていることを認めてあげることで、子どもの「自己肯定感」は育まれます。子どものできていないこと、足りないことばかりを責めて、子どもの自己肯定感をつぶしてしまう親が多い気がします。子どもの自己肯定感を育むのは、学校や教師ではありません、親、なんです。

 

ご自身の子どもがスポーツに打ち込んでいるスポーツペアレンツの方であれば、スポーツ心理学であったり、コーチング学であったり、少し学んでみることをお勧めします。

自分も経験したからというだけで、自分がやらされていたことを子どもに押し付けるようなことはしてはいけませんし、「根性が足りない!」などと親が出てきてしまうのも間違ってますね。

 

Q:スポーツ障害を起こさないため、そして起こりにくい身体作りなどはできますか?小さいうちから行っていたら良いことや習慣などがあれば教えてください。おススメのアフターケアなどがあれば是非!

A:選手自身が「セルフアフターケア」の知識をもち、実行してほしいのですが、小さいうちは特に、親の協力なくしてはできません。

まず自分にとってバランスの良い食事をとること。これは、アフターケアの中で一番大切なことです。

そして睡眠をしっかりとること。質と時間が大切です。昼間に摂った栄養分を使って、寝ている間に身体は修復されるわけです。

食事と睡眠、これは家庭でしっかりサポートしてあげてください。

選手は、自ら「セルフアフターケア」を行います。

まずセルフストレッチ。その日に酷使した身体を緩めるために運動後に行います。

それでも緩まないくらい筋肉が緊張していたなら、セルフマッサージ。

また、熱を持つほど酷使した場合は、アイシング・・・

など、セルフアフターケアという意識を持てるようになったらいいですね。

 

Q:トレーナーがいない現場で、これだけは用意しておいて!というものがあれば。

先生がバレーボールのトレーナーをされていたころ、トレーナーズバッグには何が入っていたか、試合や練習の時にどんな準備をされていたか教えていただけますか?

A:緊急連絡先ですね。病院の電話番号、アクセス方法について。応急処置の道具一式、これは一度も使わないのが理想。

AEDがどこにあるのか、などを確認しておくのもいいでしょう。

 

 

>(