専門家インタビュー　

アスレティックトレーナー　岩崎由純先生　（２）

【子どもとスポーツ、トップ選手とは？】

 

Ｑ：年代別における、理想とされるスポーツとの関わり方についてアドバイスをお願いします。

Ａ：より上のレベルに行こうと思えば、非常に専門性の高いものを専門的にマスターする必要があるかもしれませんが、私はそうではないと思うのです。年代別にスポーツにおける関わり方は違うのです。

特に幼少期やジュニア期であれば、本来、まんべんなく神経系、バランス能力や筋力も含めですが発育、発達論の一般常識に基づいてスポーツに関わるべきなのです。スキャモンの発育・発達曲線すら知らない人がスポーツの指導に携わっているのは、おかしい！

 

専門種目をやっている中でも、全体的な身体能力を培っていくような指導法であるべきです。

 

一つの競技、トレーニングだけに集中するのではなく、クロストレーニングですね。水泳をしている子が水泳しかできない、というのではなく、また、器械体操をしている子供が球技は全くできない、というはおかしいのです。

球技をしている子供でも、器械体操にある動きを体験すべきなのです。

 

違うスポーツを練習の中に取り入れてみたり、気分転換で普段とは違う動きを入れてみたり、ということが必要なのです。

 

自分がその競技をやってきた、というだけではもう指導はできないのです。

 

バイオメカニクス（生体力学）にしろ、キネシオロジー（運動機能学）にしろ、コーチ学、心理学、などをちゃんと理解し、エクササイズフィジオロジー（運動生理学）などが分かっていないと、監督やコーチはできないのです。

サッカー界はそれが徹底されてきていると思いますね。

コーチ学を知らない人がコーチでいるなんて、あり得ないことだと思います。

 

Ｑ：日本の学校の部活動は、今後どのようになっていくことが理想だと思われますか？

Ａ：部活を何のためにやるのか？ということを皆で統一した考えや見解を持つべきときがきたのかな、と思います。

「勝つため」、なのか、「人として成長するため」、なのか。

部活動の目的が、子どもたちにとって「人としての成長」を促すこと、なのであれば、勝ち負けよりも、みんなが１つの目標に向かって頑張ること、それまでの努力や、仲間と協力することの大切さ、そういった経験ができる事が素晴らしいのだ、と顧問の先生も指導者も、そして保護者の方もフォーカスすべきなのでは？

 

Ｑ：岩崎先生が考える「トップ選手」とはどんな人でしょう？トップに行ける人と、行けない人の差は何でしょう？

Ａ：現実的なことを申し上げると、「トップ」になるには、「才能」が必要です。レクリエレーションスポーツと、アスレティックスポーツは、違うもの、なのです。

アメリカの大学の話しをすれば、例えばバスケット。バスケットボールチームの１５名に入ろうとすれば、全米からスカウトされるその中にまず入らなければいけません。才能がなければ、バスケットが好きで上手でも、トライアウトにはまず受かりません。

国内での話しをすれば、県で一番になっても、難しいのです。各県で１名ずつ、４７名もいますよ！その中でトップになる、というのには、やはり他の人とは全く異なる、もしくは抜群に飛びぬけている「才能」が必要なのです。

 

Ｑ：「努力」しても「才能」がなければ無理ですか？

Ａ：トップ選手には「才能」が必要ですが、才能があっても、遊んでいたり努力しないようでは当然トップ選手にはなれません。両方が必要です。

プロや実業団で活躍できる選手を目指すのならば、才能プラス、「他の誰よりも努力する」ということは絶対に必要です。

 

例えば、イチロー選手。彼は世界で一番努力しています。

 

同じような努力を他のメジャーリーガーにできるか？と聞くと「できない！」と言うんです。メジャーリーガーの選手たちが、イチロー選手と同じ生活のルーティンをこなすことは、「できない！」と断言するのです。

ですから、トップの選手になるためには、そしてトップ選手であり続けるためには、「才能」プラス「努力」が必要です。

 

一般の人が、必死に努力して、自分の夢に向かって目指すことはもちろんできます。できます、が、努力すれば全員がメジャーリーガーになれるのか？というと、そうではないですよね。

努力をすれば、みながプロの選手になれるのか？というと、そうではない。

 

そうではないけれども、その努力の過程で自分自身の人生においての頑張り方や、耐え方、人とのコミュニケーションの取り方、そして今度は人を支える立場になった時の支え方、とか心くだけたときの立ち直り方、とか、スポーツを通じて、頑張ることによって、努力をすることによって、学べるわけです。

スポーツを通じて、自らの人格形成や人としての成長を高めるのであれば、めい一杯頑張らなければ、努力しなければ、中途半端ではできないのです。

 

その努力は、トップ選手になれなかったとしても、非常に尊いものなのです。

 

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