専門家インタビュー

日本ライフセービング協会 小峯先生⑤

Q:小峯先生が考える、「危機管理教育」とはどういうものでしょう?

A:今、海辺に住む保護者の方は、お子さんが学校から帰ってきたら「海に行ってはダメ!」と口をすっぱくして伝えるようです。

しかし、危ない、危ない、と遠ざけてしまうと、「何が危ないのか」が分からず、ヒヤッとするような体験もないので、「危なくない海との付き合い方」を覚えるチャンスが全くなくなってしまいます。

それは海だけではありません。

危ないから近づかない、危ないからやらない、のではなく、危険を知って、上手く付き合う、という方法が何よりの「危機管理教育」だと思っています。

 

われわれ人間は、自然と切り離しては生活できないのです。

自然とどう共存していくのか、また、いつ起こるかわからない自然災害にどう対処し、どんな準備をしておくのか、を常に考えていかなくてはいけません。

 

ジュニアライフセービングプログラムでは、まず子どもたちに自分の命を守る方法を身につけてもらい、その次のステップとして、自分を守ることができたら、今度は友人や家族を守りたい、そして助けたい、と思うようになる。

 

その「誰かのためになりたい」という思いを、海というフィールドで体感することは、子どもたちにとって非常に有意義だと思うのです。海での体験が、やがて陸の上でも生きてくると信じています。

 

 

最後に、ベストスポーツペアレンツを目指して!一言お願いします!

 

大人(親)は誰しも、子どもの健やかで豊かな心と身体の成長を願っています。愛(いと)おしくかけがえのない子どもたちの成長を正しく導き、温かく支援していくことが大人(親)の役目であると思います。大人(親)自身が、自らの生き方や生き様、生きていくことの深い意味を考え、生きること、そして生命の大切さを見つめ直さなくてはなりません。

 

その基盤があってこそ、子どもたちに伝えて(教えて)いくことができるのではないでしょうか。

生きていることの素晴らしさ、喜び、苦しみ、悲しみ、そのすべてが生きる力につながっていくのです。

子どもたちに伝える(教える)ことはもちろんですが、何よりも、大人(親)の方々にこそ、まずは共感いただきたいと思います。

いじめや自殺などの悲劇的状況は、子どもたちだけの問題では決してありません。

日々、子どもたちと向き合っているすべての大人(親)こそ、生き方や自他の生命に対する豊かでしなやかな感覚や感性を磨いておく必要があると思います。私たちの基盤となるライフセービング教育が子どもたち、そして、生命の大切さを伝える大人(親)の方々にとって有効に活用されることを願っています。

 

小峯先生、ありがとうございました!

 

日本ライフセービング協会よりお知らせです・・・

<JLA ACADEMY>

私たちのプログラム(資格講習会)では、自他の生命を守り救うための知恵と態度が学べる内容となっています。自助と救命の連鎖に大きく関わる心肺蘇生(AED)の普及にも、JLAの果たすべき大きな役割があることをご理解いただければ幸いです。皆様の活動の何かお役に立てれば嬉しく思います。こうしたプログラムを広く、そして多くの人々に提供・提言し、そして共有することで、さらなる付加価値を構築して行きたいと考えています。決して押しつけではなく、さりげなく共感してもらえれば嬉しく思います。

 

取材を終えて・・・

ライフセービングは、その技術やスピードを競う大会もあります。

しかし、他のスポーツ競技と徹底的に違うのは、その競技力は「誰かのため」、であること。

ビーチフラッグのフラッグは、傷ついた人。その人のために一秒でも早くたどり着きたい、という思いでライフセーバーは走る。

荒波に向かって飛び込む。苦しんでいる人をいち早く救ってあげたい、という思いで。

水中で人を救うためには力がいる。その為にトレーニングを積む。

全て、「誰かのため」に繋がっているのです。

そのライフセーバーを率いるリーダーの小峯先生。

ライフセービングに小峯あり!というほど強烈なカリスマを持つ小峯先生。海での安全な活動について、だけが今回の取材目的ではありません。

 
ライフセービング、それはつまり、命を救う、ということ。
 
自らの命を大切に思えば、次は家族の命も大切に思うことができる。
自分の命を守ることができれば、次は身近な人を守りたい、と思うことができる。
自分の命を救うことができれば、友人の命を救いたい、と思うことができる。
 
「相手を思いやる」ということができれば、今問題になっているいじめや体罰も起こらないはず。
 
その「相手を思いやる」という気持ちを自然に持つことができるきっかけの1つが、ライフセービング、なのです。
 
 
最後に、小峯先生からご紹介いただいた一通のお手紙をご紹介します。
 

高校教諭となった大学の教え子より、心ある書簡と小冊子が送付されてきました。

開封すれば、赴任してから3年目でライフセービングを授業に導入し、一年間のプログラムを受講した生徒らがまとめた「研究論文集」でした。

各生徒らの文面から、教師への尊敬と、情熱をもって指導されたであろう、まさに膝を打つものばかり。

これは高校2年生の文章です。

「ライフセービングが私という人間を変えたといっても過言ではない。ライフセービングを学ぶ前の私は、やさしさ、思いやり、そんな言葉に最も縁がない人間であった。

例えば電車に座しているとき、杖をついてきた老人が乗ってきても寝たふりをするような人間であった。やさしさ、思いやりのある行動をするのは何となく恥ずかしかった。

ところが、ライフセービングを学ぶうちに自然とそういう気持ちは無くなっていた。さらには人の為に何かしてさしあげたいと思うまでに。ほんの一年でこんな風に考えられる人間になるとは・・・自分でも驚く。

また将来のことも考えるきっかけになったのもライフセービングであった。もしライフセービングに出会わなければダラダラと高校生活を過ごし、何の目的もなく大学へ行って、ほんとうにつまらない人生を歩んでいたかもしれない。

 

だが現在の私は違う。もっともっとライフセービングで学んだことを活かしたいと思う。ライフセービングで学んだ経験は、私にとってプラスになったなどという程度ではない。ライフセービングが私にとって構成要素となりつつある。

ライフセービング資格を取得したということは、心肺蘇生法や三角巾による手当てができるということである。しかしこの資格証を持ち歩くことは大きな責任を持たなければならない。

事には完璧な処置が求められる。私は資格証を持つにふさわしい人間であり続けるために、常に向上心をもって生きていきたいと思う。」

 

>(

 

 

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