専門家インタビュー

日本ライフセービング協会 理事長 小峯先生②

<救命救急を知る、ということの必要性について>

 

Q:小峯先生は、日本サッカー協会の指導者やトレーナー、そして学校や幼稚園の教職員向けの研修会などでも救命救急の重要性や、「いのちの教育」ついてお話をされることもあるようなのですが、そこで強くお伝えしているメッセージなどがあれば教えてください。

A:子どもたちを預かる立場の大人はすべて、大切な「いのち」を親から預かり、そしてまた無事にその「いのち」を親の元に帰さなくてはいけません。指導者や教職員の方にはその「いのち」に対して意識を高く持ってもらうようなお話をしています。「子供の命を救う、ということは、子どもの人生を救う」ということ、なのだと。

また、バイスタンダーの大切さについてもお伝えしています。

日本サッカー協会川淵キャプテンとの対談

 

Q:バイスタンダーとは?

A:倒れた人間のすぐそばにいる人間です。グランドで選手が倒れれば、選手や審判がバイスタンダーとなります。なぜなら、監督やコーチ、トレーナーよりも近くにいる存在が選手なのですから。

命を救うには、いかに早く救命救急を始めることができるか?ということです。医師やトレーナーを探す間、ピッチに駆け付ける間、すぐそばにいる選手や審判が心肺蘇生を開始できれば、蘇生率が上がります。

 

ここで1つの資料をご紹介します。(2006年 保健体育教室 第4号 「座談会」応急手当から考える”命”の教育 より引用)

*バイスタンダーの重要性について話されている部分を引用しています。小峯先生は座談会の1員として参加されました。

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櫻井医師: 10年間、国内でさまざまな取り組みがなされたけれども、その間の救命率は1%しか上げることができなかった。

しかし、民間にAEDを投入(一般の人もAEDを使用可能)とした結果、救命率が5倍上がった。つまり、日本の救命医療はバイスタンダーがいないと成り立たないといえる。

田中医師: 1年間の平均値で、救急車の到着まで平均6.4分という統計がある。しかしそれは実際に救急車が走っている時間で、傷病者の元に到着するまで実際は11分近くかかっているといわれる。

発症から救命救急士が到着するまで、あるいは病院や救命センターにつくまでの間を埋めるのはバイスタンダーしかいない。

救命センターの死亡率はどこも平均して約30%。つまり10人に3人、亡くなっていく方に立ち会う。どんなに救急医師がベストを尽くしても助からない命がある。

しかし、誰かが声をかけていれば、誰かが応急処置をしてくれていたら助かっていた命がその中に含まれる。

小峯: 日本とイギリスの子どもに、「自分のお父さんが倒れたらどうする?」と質問したら、日本の子どもは「大人を呼びに行く」、イギリスは「気道確保する」と答える。救うということが、心の中心にある。

現場から言えば、救命救急センターのドクターをいかにひまにできるかということ。バイスタンダーが「これだけ完璧にやったんだから、あとは頼む」と言えるような世界にしたい。

 

Q:トレーナーがいないスポーツ現場(主にジュニアスポーツ)においては、保護者やボランティアのコーチが万が一の対応、つまりバイスタンダーになる可能性がありますね。万が一に備え、心肺蘇生法は最低限身につけておくべきですね?

A:もちろんです。指導者であれば必須です。AEDが現場のどこに備えられているかも、確認してください。

 

Q:子どもたちもバイスタンダーになる可能性はありますね。

A:そうです。ですから私は、学校の保健体育でも救命救急について子どもにきちんと教える必要があると思っています。日本ライフセービング協会では、現在ジュニアやキッズの教育に力を入れています。子どもでも、きちんと教えれば心肺蘇生はできますし、AEDの扱いも可能です。

 

Q:キッズもですか?!

A:さすがに未就学児は心肺蘇生はできませんが、「自然や人との関わり」、自分の身体のしくみを学びながら、命の大切さを実感できるようなプログラムを行っています。

 

*現在、キッズライフセービングプログラムは、都内ポピンズにて展開中。

 

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