専門家インタビュー

横浜ベースボール整骨院 吉田院長 (3)

<野球障害について>

Q:ジュニア期における野球障害で多いのは、やはり肘ですか?

A:圧倒的に肘ですね。それも内側側に起きる障害が多いです。ただ、外野手の子どもは肩に痛みを抱えている子が多いですね。

 

Q:やはりピッチャーの子に多く見られますか?

A:それが実は、ピッチャーだけでなくキャッチャーの子どもにも多くみられるというデータを最近得ることができました。(5,6年生)

 

Q:キャッチャーですか?

A:そうです。この結果には私もちょっと驚きました。投げる量はピッチャーに比べて少ないはず、なのに、肘の内側に痛みを抱えたキャッチャーの子がかなり多かったのです。

 

Q:それは何故でしょう?

A:色々な要因があるかと思うのですが、キャッチャーが思い切り投げなければいけない場面を考えてみると、バッターを避けて投げなければいけなかったり、ピッチャーと違い、シチュエーションに応じて様々な方向に身体を向けて、体勢が不安定な状態でボールを投げることが多いのです。つまり、動作の調和が難しい状態で力いっぱい投げなければいけない。



Q:これまで野球障害で悩んでいる子どもたちをたくさんご覧になって、問題だな、と感じられることはなんでしょう?

A:個々の発育、発達に則したトレーニングシステムの指導方針が構築されていない、ということだと思います。子どもたちの

成長に合わせた指導方法、というものが野球界全体(硬式、軟式問わず)に普及されているのか、というとそうではありません。野球における指導者制度や教育システムの改正は、今後どんどん行われていくよう、私も働きかけていきます。

 

Q:スポーツ障害のトップは相変わらず野球肘や野球肩だと聞きます。なかなか改善が見られないのは何故だと思われますか?

A:実際問題、どうやったら予防できるのか、どういう指導をすれば野球における障害発生件数を減らすことができるのか、ということまで多くの指導者の方はご存じないのだと思います。もちろん、自ら勉強されて取り組んでおられる指導者の方も増えてはきています。

野球のスキルやルールを教えることはできても、故障しない身体作りや、成長に合った身体の使い方や指導方法まではよく分からない、というコーチもまだまだたくさんいますし、野球界において故障者を出さない指導指針のようなものは特になく(現在は投球制限くらい)、指導者任せになってしまっているのが現状です。

 

Q:発症率を低下させるためにはどうしたらよいでしょうか?

A:まずは成長発達の特徴に合わせた指導方針の普及と徹底、でしょうか。そして早期発見です。現在の投球制限だけでいいのか、というとそうではないと思っています。数を減らすだけでは問題の根本的な解決にはなっていないと思います。

 

Q:早期発見はどうしたらできるでしょう?

A:我々もエコーを持参して実際の現場に行き、子どもたちの肘の状態をチェックする活動をしています。野球肘には、内側型と外側型があり、内側型は痛みや違和感を感じることができますが、外側型の多くは違和感など感じないまま進行してしまいます。早期発見のためにも、定期的なエコーチェックは必要だと感じます。

野球肘の外側型には3段階あり、初期の段階で発見できれば90%以上は手術の必要がなく治癒が可能です。中期の段階での発見は、半分はすでに手術の必要がでてきてしまいます。

ただ、エコーチェックをすれば早期発見には役に立ちますが、これも根本的な解決ではないと思います。野球肘を起こさないような指導方法や練習内容に変えていかなければ、投球制限をしても、エコーチェックをしても、発生を減らすことはできないのではないかな、と思っています。

 

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