JADA平井さんインタビュー②

Q:アスレティックトレーナーの方でアンチ・ドーピングの活動に関わっている方は多いのでしょうか?

A:検査員として活動されている方もいらっしゃいますし、チーム等で、アンチ・ドーピングの指導等を行うのが医師やアスレティックトレーナーの方が多いようです。

選手がどんな薬を飲んでいるのか?サプリメントを飲んでいるのか等チェックしているのもアスレティックトレーナーの方が多いようです。

 

Q:検査員のお仕事内容について少し教えてください

A:検体の採取が主な仕事です。選手の元へ行って、対象になった選手から検体を採取し、その検体を分析機関に送るまでが仕事です。

 

Q:それは尿、ですか?

A:尿と、最近では血液の採取もあります。

 

Q:ドーピング、というと、かなりトップレベルの話しで、あまり我々には馴染みがないのですが、小さいうちから気を付けておいた方が良いこと、スポーツペアレンツの皆様に知っておいてほしいこと、などは何でしょう?

A:まずは、「どうしてドーピングは禁止されているのか?」ということを知ってほしいですね。

なぜダメか、それは、その行為が「スポーツの価値」を壊してしまう、から。スポーツの価値とは何なのか、どうして多くの人がスポーツに夢中になるのか?その価値を壊さないためにどうするべきなのか?と考える事です。

まずは、ドーピングが「スポーツの価値」を壊してしまう、とまずは理解していただきたいと思います。

 

Q:と、言っても、まだ遠い世界のような感じがしますが、身近で気を付けるべきことはありますか?

A:栄養補助食品、いわゆるサプリメントやプロテインパウダーのようなものは、身近で、多くの周りの人が活用しているので、摂取することに対しハードルが低いですよね。摂取する前に、他にするべきことはないのか?ということをまずは考えてほしいですね。

サプリメントは、医薬品ではなく食品扱いなので、禁止成分がその中に含まれていても分からないうちに摂取してしまうこともあるので気を付けてほしいです。含有成分を全て記載する必要は食品の場合ないので、禁止成分がその中に含まれていても、分からないのが問題です。

 

Q:ドーピングについてはJADAのホームページを是非見ていただきたいですよね。マンガなどでの解説もあり非常に見やすく、初心者の方でも分かりやすいです。

A:そうですね。

是非一度みていただきたいですね。

また、サプリメントを摂取すること自体が、競技力向上を目的としていると考えられ、それがドーピングにつながるんです。そもそも「補助」といっているのに、効果がてきめんに表れるようなものは注意が必要ですし、若い時に禁止物質を摂取していると副作用も強くでる可能性は高いです。逆に、効果が実感できないものを使用しているのであれば、お金の無駄ですよ、ね。

 

Q:年代が上になっていくと、選手本人への教育も大切になってきますか?

A:その通りです。若い世代の選手の憧れとして見られるようになることから、ロールモデルとして他の人への影響力が強くなる。ということを意識して欲しいです。

選手への教育は、JADAだけでは難しいので、各競技団体にも強い意識を持って協力してもらいながら、より多くの選手たちに教えるべきですし、選手への影響力が大きい部活動の顧問の先生にも、是非JADAのアンチ・ドーピング教材をダウンロードしていただいて生徒たちに伝えてほしいですね。

 

Q:海外の事情はどうでしょう?

A:アンチ・ドーピングの先進国と言われているのは、イギリス、アメリカ、オーストラリア、ノルウェー、カナダです。海外は特に、スポーツを文化と捉えているので、その文化を汚すようなことは絶対に許さない、という風潮があります。

 

Q:平井さんが長い活動を通じて、子ども達やその保護者にとっての理想のスポーツとの関わり方についてのお考えを教えていただけますか?

A:最近ではよく言われていることかもしれませんが、私も子供のうちは色んなスポーツを体験させてあげて欲しいと強く思います。

特に男の子では、サッカーや野球に多くの能力ある子ども達を取られてしまって・・・(笑) 強い学校になると、1軍から6軍くらいまであるところもあります。

そうなると、5軍や6軍で試合にもなかなか出られない環境で、その競技を続けていく価値が果たしてどれだけあるのだろうか?と、トレーナーの経験からも思います。

もしかしたら、違う競技に転向していたらもっと高いレベルの試合に出ることができたかもしれない。

 

試合にでることが全てでもないでしょうし、高いレベルでの試合にでることが全てでもないとは思いますが、他にもたくさんの競技があるのだから、プレーする喜びや試合に出る楽しさを感じられるものに転向する、という考えがあってもいいと思うのです。

でもきっかけが必要なんですよね。そのためにも、保護者の方には子供に色々なスポーツを体験させたり、観戦に連れて行ったりしてほしいと思いますね。

 

それはトレーナーを目指している子もしかり、で、これまで自分がやってきたスポーツであるサッカーのトレーナーになりたい、バスケのトレーナーになりたい、と夢を持っているのはいいことですが、それはつまり自分の仕事の幅を狭くしてしまっているのです。他にも面白いスポーツは沢山あるのだ、ということを知らないんですね。

実際、実習に言ってアメフトを見て、「こんな面白いスポーツがあったんだ!」と気づく子もいます。

 

つまり、視野を広く、色んな情報を得る事、知ること、触れることが子供のうちは大切なんじゃないかな、と思います。そのサポートは親の役目でしょうね。

それから、スポーツに関わる人間として強調したいのは、「文武両道であれ」ということです。

 

Q:と、いいますと、勉強、ですね。

A:はい、スポーツだけで生きて行けるわけではないのです。実際、トップレベルの選手たちは、非常に頭が良いです。

頭がいい、から、動きが読める、頭がいい、から、監督の言っていることが理解できる、頭がいい、から、考えたことを体現できる。

才能だけで、できてしまう選手もいますが「まれ」、ですし、その後が続きません。

選手でいられる時期というのは、本当に短いのです。その後の人生の方が長いのですから、そこはやはり考えられる頭がないと・・・。

 

Q:平井さんが考える、年代別における理想のスポーツとの関わり方について教えてください

A:

小学生:多くのスポーツに触れ、幅広く楽しさを知る

中学生:様々な出会いをスポーツで得て、自分の成長へ繋げる

高校生:人と社会を学ぶ。スポーツの価値、それが社会に与える影響を学ぶ。文武両道が必要であることを学ぶ。1つの事に固執しない。

大学生:スポーツの担い手となる意識を持ち、スポーツの価値を体現する。

 

Q:親の影響が大きく反映しているな、と思われる競技などはありますか?

A:パッと思い浮かぶのは、ゴルフとフィギュアスケート、でしょうか。これは色んな意味で親のサポート力に非常に影響を受ける競技ではないかと思います。

 

Q:平井さんが考える理想の選手と保護者の関わり方、とはなんでしょう?

A:例えば、アンチ・ドーピングで言うと選手は理解してくれているが親は理解していない、ということがあります。

スポーツ選手を持つ親(スポーツペアレンツ)として、アンチ・ドーピングについて知っておいてもらいたいし、その重要性を子どもにきちんと伝えて欲しいです。

親も広い視野を持つべきだな、というのは感じます。

全く関わらないのも問題ですが、近すぎる(過干渉)のもどうかな。。。、とも感じます。

 

 

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